多血小板血漿（PRP）治療｜井上整形外科

日本では、2011年頃よりアスリートのスポーツ外傷を対象としてPRP治療が行われてきましたが、その効果が認められ、近年では徐々に適応が広がり、他の疾患にも行われるようになりました。特に変形性関節症の保存治療と手術をつなぐ第三の治療として、PRP療法は広がりを見せています。
具体的には、まずご自身の採血をさせて頂きます。その血液から精製抽出したPRPをご自身の患部に注射をする再生医療です。

当院は、再生医療等の安全確保に関する法律第40条項第1項の規約に従い厚生労働省へ特定細胞加工物製造届け出を行い、細胞培養加工施設としての認可（細胞培養加工施設番号：FC3230028）を受けており、又、再生医療等提供計画（計画番号：PB3230101,PC3230117）の認可を得ております。当院では、TriCellPRP分離・濃縮キットを用いてPRPを抽出します。TriCellPRP分離・濃縮キットは臨床使用可能な高度管理医療機器（クラスⅢ）として厚生労働省より製造販売承認を受けています。

多血小板血漿（PRP）とは

血液の中には、傷を治す働きを持つ「血小板」という細胞があります。
ご自身の血液を採血し、遠心分離などを行い、高濃度に濃縮したものが多血小板血漿（Platelet-Rich-Plasma:PRP）です。

PRPの効果

血小板内部には700以上の生理活性物質があると言われていて、組織修復作用や抗炎症作用や鎮痛効果などがあると報告されています。PRPは、人が本来持っている治癒能力や組織修復能力を引き出して、傷んだ関節や靭帯などの治癒を促すと考えられています。

対象疾患

変形性関節症：肩関節、膝関節、その他の関節（肘関節、手関節、股関節、足関節）、スポーツ外傷など

適応基準

重篤な合併症（全身・局所）を有していない方
この治療について十分な理解が得られている方
上記の確認の後に、文章による同意取得が可能な方

除外基準

発熱（38.0℃以上）がある方
明らかな感染を有する方
貧血の方
担癌状態にある方
抗癌剤、又は免疫抑制剤を使用している方
1か月以内に当治療を受けたことのある方
薬剤過敏症の既往歴を有する方
18歳以下の方
その他、担当医が不適当と判断した方

再生医療の手順

1. ご自身の血液を30～32ml採取させて頂きます
2. 遠心分離機に2回かけてPRPを精製抽出します
3. PRPを消毒した患部に注射致します。採血から投与するまで概ね30分位です
4. 注射後、10分以上経過を確認してから、ご帰宅頂きます

その他

当院ではPRP治療は完全予約制で行います。事前にご連絡下さい。
費用は、PRP注射1関節につき88,000円です。
料金には診察料、採血・注射施術料、PRP精製技術料、精製キット、他諸材料費、消費税が含まれます

他の治療法との比較

鎮痛剤を中心とした服薬治療では、疼痛などの症状が悪化した場合、より強い薬に変更することがありました。しかし強い薬を長期間服用すると、胃腸障害などを合併することもあり、投薬を中止しなくてはいけないこともありました。

又、変形性関節症に対しては、長年ヒアルロン酸の関節内注射が行われていますが、投与後数日で関節内から消失すると考えられています。2018年米国整形外科学会雑誌（JAAOS）に掲載をされた報告では、治療効果のランキングで、PRPは疼痛に対する効果でも、機能に対する効果でも、いずれもヒアルロン酸の関節内注射より効果が高いとされ、臨床での有用性が徐々に立証されてきています。当院でも治療するうえで、効果的であると考えております。ただ、こうした報告もある一方で、PRPの場合、材料となる血液が個人個人で違うため、効果が限定的となる場合も考えられます。個人差があるので、ご了承下さい。

投与前の関節の変形具合により異なりますが、変形がそれほど重度ではない場合、概ね1～3,4回の注射で、6～12か月程度、効果が持続すると考えられます。

治療後の注意点

治療当日は関節の感染を予防するため、入浴やシャワーは禁止です。
治療当日は飲酒も喫煙も控えてください。
注射後3～4日は、腫れやかゆみ、赤みや痛みが出ることがありますが、多くの方は、その後自然に消失していきます。ただ人によっては疼痛が持続し、長引くことも考えられます。注射後は、痛みが和らぐまでは、安静にして下さい。
注射後、一時的に炎症を引き起こし、関節可動域が低下することがあります。状態に応じて、ストレッチなどリハビリを説明し、行って頂くこともあります。